「イヤ……。私は瑞樹と別れない」
はぁ?
何だよそれ。
別れないって……。
「頼む、星羅。俺と別れてくれ」
「どうして?」
どうしてって……。
“はぁ”と、俺は小さく溜め息ついた。
「俺がどうして別れたいか……。自分の胸に手を当てて考えろ」
「わからない。どうして瑞樹が私と別れたいのか……」
どこまで鈍感な女なんだよ。
俺は星羅を見た。
「瑞樹?」
「ん?」
「好きな人でも出来たの?」
「いや……」
俺は嘘をついた。
俺は香月が好きだ。
香月のために別れることにした。
でも香月を好きになる前から星羅には愛がなかった。
それも別れることにした理由のひとつだ。



