【先生×生徒シリーズ】壊れるほど抱きしめて―先生の声を聴かせて―




本屋の店員に聞いて、手話の本があるところを教えてもらった。


手話だけの本でもいろんな本がある。


初心者用から上級者用まで。


俺は1冊1冊、本を手に取って見ていた。


どれがいいんだ?



「あっれぇ?瑞樹じゃない?」



背後で聞き覚えのある声が聞こえた。


振り返ると、男と手を繋いでいる星羅がいた。


しかもこの前と違う男。


目の前の男は、年齢は俺と同じくらいかな?


スーツを着てビジネスマン風の男。
この前のチャライ男とは逆だ。



「瑞樹、何してんの?」



それはこっちのセリフだ。



「欲しい本があるから探しに来たんだ」


「ふーん……」



星羅は俺の持ってた本に目を落とした。



「星羅は何してんだ?隣の男、この前の男と違うみたいだけど?」



星羅が男といても何も感じなくなった。


腹を立てる気にもならない。


勝手にしてくれと思う。


だって、もう……。


俺は星羅に愛はないから……。


別れると決心したから……。