―瑞樹Side―
職員室を出た俺は、出席簿を持って3Dの教室に向かった。
『3Dには耳の聞こえない生徒がいます。特別扱いはしなくていいですが、話すときにはなるべくゆっくり話して下さい』
そう校長に言われたのを思い出す。
耳の聞こえない生徒か……。
俺は出席簿を開く。
“香月ハル”
この名前の生徒が耳が聞こえないらしい。
今日の朝のことを思い出す。
駅でハンカチを落とした少女。
この学校の制服を着てた。
俺が呼び掛けても反応しなかった。
あの子が、香月ハルだったのか?
いや、まさかな……。
それはないか……。
俺は出席簿を“パタン”と閉じて教室に向かった。



