―瑞樹Side―
時刻は21時少し過ぎたばかり。
花火は終わったから、もう送って帰らなきゃいけないのに……。
沈黙が続く車内。
なかなか車を動かすことが出来ない。
中学生をこんな時間まで連れてるなんて教師失格だな……俺……。
「香月?時間、大丈夫?」
俺の言葉に驚いた顔を見せる香月。
そりゃそうだよな。
送って行くか……。
でも香月は、俺の目の前で手をヒラヒラさせると、
『お母さんにメールしてみるね』
と、書いたメモ帳を見せてきた。
「あ、うん……」
香月は携帯でメールを始めた。
しばらくして香月の携帯がブルった。
携帯を見て、携帯をパタンと閉じた。
「お母さん、何て?」
俺と花火を見に行くことは言ってないはず。
でもドキドキするのは何でだろう……。
『友達とファミレスに寄って帰るってメールしたら、あまり遅くならないでねって。だから大丈夫!』
メモ帳にそう書いて俺に見せた。
そっか……。
やっぱり友達と花火を見に行くって言って出たんだ……。