先生の車の窓ガラスを叩いた。
それに気付く先生。
驚いた顔をして私を見てる。
先生が中から助手席のドアを開けてくれた。
助手席に乗る私。
「浴衣着てるからビックリしたよ」
私は恥ずかしくて下を向いた。
先生が私の肩をポンポンってする。
私は顔を上げて先生を見た。
「よく似合ってるよ」
先生が笑顔でそう言ってくれた。
恥ずかしいけど、先生から聞きたかった言葉。
『ありがとう』
手話でそう言った。
「何て言ったの?」
あっ、先生は手話わからないんだった。
私は携帯を取り出して『ありがとう』と打って先生に見せた。
「さっきの手話は“ありがとう”って意味?」
“コクン”と頷く。
「そっか。ありがとうって意味かぁ……」
先生は笑顔でそう言うと、車を走らせた。



