「あのな、吉川?俺が教師という立場じゃなくても、たぶん吉川のことは好きにならないよ」
「どう……して……?」
「人をイジメてまで好きなヤツを手に入れるやり方は卑怯だと思わないか?」
「えっ……」
「なぁ、吉川。人をイジメて楽しいか?」
「………」
吉川は何も言わずに俯いた。
「人をイジメて幸せを手に入れても、それは本当の幸せとは言わないと思わないか?」
吉川は唇を噛みしめた。
「もし吉川が香月の立場ならどうする?人の痛みをわかる人間にならないとな。吉川は本当は優しい人の痛みのわかる人間だと俺は思うぞ」
せきを切ったように泣き出す吉川。
「話してくれてありがとう。苦しかったな。辛かったな……」
俺はそう言って、吉川の頭を優しく撫でた。



