「朝日中学の川瀬です。お世話になります。あの……ハルさんは帰られてますか?」
『補習が沢山あるとかで遅くなるとメールがありましたが……。何かあったんですか?』
えっ?
どういうことだ?
『あの……先生?』
「あっ、す、すいません」
心配そうな母親の声。
保健室には来てないけど、母親にはメールしてる……ってことは、香月はまだ学校にいるってことか……。
「あっ!今、香月が補習に来ました」
俺は咄嗟に嘘をついた。
香月の母親を心配させないために……。
教師として嘘をつくのはどうかと思う。
だけど、香月の家に補習のことを言いに行った時、香月は母親に心配させないように明るく振る舞っていた。
あの時の香月の顔が浮かんだから……。
だから俺は嘘をついてしまった。
『そうですか』
安心した声になる母親。
そして俺は電話を切った。



