【先生×生徒シリーズ】壊れるほど抱きしめて―先生の声を聴かせて―




ん?


後ろに気配を感じるような……。


私は後ろを振り返った。


そこにいたのは1人の男性。


黒のスーツにビジネスバッグを肩から斜め掛けしている。


黒い長めの髪に切れ長の目。
筋の通った高い鼻。
整った眉毛に薄い唇。
色白の肌。
長身のスラッとした体型はパッと見、ホストかモデルみたい。


でもビジネスバッグを持ってるからサラリーマンなんだろうか……。


彼を見て“ドキッ”とした自分がいた。


私は怪訝そうな顔をして彼を見た。


彼は何か言ってる。


早口なのか口の動きがハッキリしてないのか読唇術は使えない。


私は彼の手元を見た。


…………あ。


私のハンカチ……。


彼は私のハンカチを拾ってくれたんだ。


私は彼の手からハンカチを取ると頭を下げて改札まで歩き始めた。