「笑ってくれた」
先生はそう言って微笑んだ。
「香月は泣いてるより笑ってる方が……俺は好きだな……」
“泣いてるより笑ってる方が……”の次は何て言ったんだろう?
よく読み取れなかった。
『泣いてるより笑ってる方が……何?何て言ったの?』
「……何でもない」
先生は首を左右に振った。
「なぁ、香月?」
私は先生の方を見た。
「ゴメンな……」
どうして謝るの?
私は首を傾げて先生を見た。
「いきなり……あんなことして……」
さっき、展望台で私のことを抱きしめたことを言ってるんだ……。
私は左右に首を振った。
『嬉しかったから……』
そう、口パクで言った。
「何?」
『何でもない』
私はメモ帳にそう書いて先生に見せると微笑んだ。