私は落ち着きを取り戻して、先生から離れて立ち上がった。
「ゴメンな……」
私は再び首を左右に振った。
「遅くならないうちに家に帰れよ」
先生にそう言われて、なぜか少しだけ悲しくなった。
“うん”と頷いたのはいいけど足が前に出ない。
その場から、先生の前から動けなくなっていた。
「香月?」
先生が心配そうな顔で見てる。
鼻の奥が“ツーン”となって目に涙が溜まっているのがわかった。
先生の顔が歪んで見える。
瞬きしたら溜まっていた涙が一気にこぼれ落ちた。
「香月?どした?」
わかんない……。
私にもわかんない……。
私は俯いて首を左右に振った。
でも涙が次から次へとあふれては流れていく。



