それから、ケントくんの痛々しいホッペに湿布を張った後私たちはそれぞれの家路に着いた。

帰り道、玲央の様子がおかしかった。普段、私の話を適当に聞き流すのは当たり前のことだけど、今日は特に聞いていない。




「あのさ」




今まで玲央が口を開いた。




「え、なに。」




何か嫌な予感。

こういう時は大抵家に帰りたくないとか、マネージャーに会いたくないとか、そういう用件。何年も一緒にいたらそれくらい分かる。




「じゃなくて」




はぁ、とひとつため息を漏らし立ち止まる玲央。




「何?………今日なんか変だよ。」




「俺、新山んちに呼ばれてんだけど。」




「………だから?」




玲央はひとつはぁ、とため息を漏らすと「……別に」と言って歩き出してしまった。



え?

今日変だよね?

なんて言えば良かった?





この日からだったと思う。

玲央が遠くなったのは。





*