「はい、どうぞ」

駅前から離れて少しすると、運転席に座ってる春樹さんが私に向かって何かを差し出してきた。


俯いてた私は少しだけ顔を上げ、春樹さんへ視線を向ける。


「これで大丈夫だった? 飲める?」

気を遣ってそう聞いてくれた春樹さんの手には、缶コーヒーが握られていた。


「だ……大丈夫です……ありがとうございます」

私はぎこちなくお礼を言って、おずおずとそれを受け取る。


すると、春樹さんが何故かクスクスと笑い出して、


「……どうしたんですか?」

缶コーヒーを開けながら春樹さんにそう聞くと、春樹さんは大きな目を少し細めて、私を見つめた。


「涼ちゃんってさ」

「はい」

「可愛いね」