「涼ちゃん!」

どこからか、私を呼ぶ声が聞こえてきた。


キョロキョロと辺りを見回すと、カフェの前から連なるタクシーの行列の最後尾に、黒のミニワゴンから降りて左手を上げてる金髪の人を見つけた。


どこからどう見ても“そういう”系のバンドマンにしか見えないその人は、昨日会った時みたいに髪の毛をセットしていないけど、すぐに春樹さんだと分かった。


「来るの早かったね」

私が近くまで行くと、助手席側に回っていた春樹さんは扉を開けながらそう言って、ニッコリと微笑む。


緊張を通り越して頭の中が真っ白になった私は、春樹さんに返事をする事も出来ずに助手席に乗り込んだ。