「実は、塾の先生と付き合ってるんだ。三年生に上がる少し前から」

リンは私から視線を逸らし、照れた表情でそう言って可愛らしい口許の端を上げる。


それを見ただけで付き合いが順調に進んでると分かったけど、羨ましさなんて少しも湧いてこない。


むしろ、あまり聞きたくないこの手の話に吐き気さえ覚える。


「凄いよねぇ! 大人と付き合ってるなんて、リンちゃんは大人だぁ」

ミサキがはしゃぐようにそう言って、私はムッとした。


大人と付き合ってるから、大人?

そんなわけがない。

受験に必死になってる、ただの“ガキ”じゃん。


心の中で悪態をつくと、吐き気がその強さを増し、リンに対しての嫌悪感でいっぱいになる。