最後の恋はアナタの隣で


「今日は本当に災難だったわね……」

予定通り三時間で体験入店が終了して、春樹さんと入れ替わりでユカリと一緒に衣装部屋まで来たママは、赤くなった私の額を見て悲しそうに眉を顰めた。


確かに災難だったけど、私はあれからずっと衣装部屋に居ただけだし、逆にママの方が災難だったんじゃないかと思う。


これじゃ、まるで給料泥棒だ。


「あの人うちの常連さんでね、今日はいつもより飲んでたみたいなの。気にしないであげてくれたら嬉しいんだけど……」

「大丈夫ですよ。気にしてません」

「本当?」

「はい」

全く気にしてない――と言えば嘘になるけど、春樹さんに言われた言葉のおかげで、私はそれほどあのお客さんの事を気にしてなかった。