その怒鳴り声の所為で、店内が一瞬だけ静まり返る。


「……すいません」

私はキレそうになりながらも謝り、言われた通りお酒を注ぎ足して、眉間にシワを寄せるお客さんの前にグラスを差し出す。


それを一口飲み込んだお客さんは、わざとらしくチッと舌打ちを鳴らした。


「何だ、この中途半端な濃さの酒は。お前、水商売ナメてんのか?」

「……いえ」

「何でお前みたいな奴がこの仕事してんだよ?」

「……」


……何で初対面の奴に。

しかも、会って数分位しか経ってない奴に、“お前”呼ばわりされないといけないんだろう。


あまりにも悔しくて、テーブルの下でギュッと拳を握る。