「春樹さーん……何も買わなくて良いからもう帰ろうよー……」

「駄目だ。決まるまで帰らないぞ」

「……」

見るからに高そうな、夜の人間御用達のド派手なブランドショップ。


春樹さんはともかく、私には明らかに場違いなこの場所で、もう三十分くらいドレス選びをさせられている。


今日は特別な日でも何でもない。
勿論、デートをしてるわけでもない。


春樹さんの、「貸出しのドレスをお前に着てほしくない」っていう我儘を叶える為だけに、強制的にこんな場所へ連れてこられた。


「……じゃあ、これで良いよ」

私はゲンナリしながらそう言って、ショーケースに飾られている薄ピンク色のドレスを指さす。


「本当にこれで良いのか?」

「うん」