「何してたんだ?」

絶望的な気分になっている私に、春樹さんが口を開いた。


やましい事は何もない。

それなのに、手の平からたくさんの汗が出てくる。


「探し物を……してて……」

「アイツとか?」

口篭る私とは対象的な、ハッキリとした春樹さんの声。


それを聞いただけで唾が上手く飲み込めなくなって、呼吸が苦しくなる。


「そ……うだよ……」

一瞬でカラカラに乾いた口からやっとの思いで言葉を漏らした瞬間――春樹さんが私に向かって、左手を振り上げた。


――…殴られる!!


反射的にそう思った。

だからビクッと体が震えた。
ギュッと目を瞑った。


――…春樹さんの左手が私の頭に触れる。