「初めまして。涼です」

「……」

「名前聞いても良いですか?」

「……」

「……」

とりあえず自己紹介から入ろうと思ったのに、お客さんは依然――私を無視して携帯をいじり続けてる。


何で怒ってんの?
まじ意味分かんない。


心の中でそう呟き、溜息が出そうになるのを堪えていると、


「……け……れよ」

黙っていたお客さんがようやく、私に向かって言葉を発した。


だけどその声が小さ過ぎて上手く聞き取りきれず、


「今何て言いまし、」

「さっさと酒作れよ!! 使えねぇ女だな!!」

――もう一度聞き直そうとした私の言葉を遮り、お客さんは目を血走らせながら、怒鳴り声を上げた。