「まじごめんね。上まで確認したら良かった」

「何で相澤が謝るんだよ? 悪いのは隠した奴だろ」

「まぁ、そうだけど……」

「とりあえず、見つかって良かったな」

そう言って優しく微笑み、私に向かって右手を上げた宮沢は、


「今度から教室に――…」

私の頭に触れる寸前で手を止めたと同時に、何故か言葉を詰まらせた。


「……宮沢?」

急に黙り込んだ宮沢を見ると、私の背後にある玄関を凝視していて。


一体何を見てるんだろうと思い、後ろに振り返ってみると、


「……ぁっ」

玄関の扉に背をつけて不機嫌そうな顔でこっちを見てる――春樹さんと目が合い、私は小さく声を漏らした。


「……涼。帰るぞ」

春樹さんはいつもより低い声でそう言って、私を待たずに踵を返す。