「変わったオーディションだよね」

ホテルの部屋で一息つくと、ママが言った。

「とにかく1週間、密着取材を続けるなんて」

「ずっとホテルにこもりっきりじゃだめって言ってたよね。指定された観光名所を1日1箇所回ることだって。何でかな」

あたしが首を傾げると、ママは肩をすくめた。

「さあ。たぶん、その全部がオーディションになってるとか。行く先々に審査員がいたりして」

「ええ?やだ、そんなの緊張しちゃって観光なんか楽しめない」

「でもきっと、それがオーディションなんだよ。どこで何が起こるかわからない。そういう緊張感の中で、どんな行動を取るかっていうのを記録して、誰がその役に向いてるかを決めるんじゃない?」

「・・・・・面接は3日目。明日は演技テスト。7日目に合格者発表・・・・・。ほんとだ、それっぽい。なんかもう緊張してきたかも」

げんなりするあたしを見て、ママがくすくす笑う。

「少なくとも、そんな顔してたら合格できないよ。普通に、観光楽しんじゃえばいいよ。大丈夫。ここまで着たら、後は成り行き任せだよ」

いいのか悪いのか。

楽天家の親を持つと、子供は心配性になるのかもしれないな。

そんなことを考えて。

だけど、ママも言うとおり、心配ばかりしてたってオーディションには合格できない。

いいや、楽しもう!

そう割り切ることにして、あたしたちは早速アメリカ観光を楽しむべく、計画を立て始めたのだった・・・・・。