翌日の午前中は演技テスト。

もちろん台詞はすべて英語で。

初日に渡された台本を持ち込み、最後まで台詞の練習をしていたあたし。

そのあたしを待っていたのは・・・・・


「ハイ、サラ」

呼ばれた部屋に入ると、そう言って笑顔で迎えたのは、なんと映画の主人公のジェリー・ナイトを演じている、ハリー・ローランドその人だったのだ。

陶器のように透き通った白い肌に、澄んだ青空のように真っ青な瞳。

薄い桃色の唇から覗く歯は真っ白に輝いていて、ブロンドの髪がさらさらと流れるように、窓から入る風に揺れていた。

「僕が、君の相手をするからね」

ハリーが流暢な日本語でそう言った。

そういえば、と思い出す。

ハリー・ローランドはすごい親日家で、自己流だけど日本語も勉強してかなり話せるって聞いたことがある。

穏やかで、優しい話し方をする人だ、と思った。

思い描いていたよりもずっと・・・・・・。

何よりもハリーのまとっている雰囲気は優しくて、傍にいるだけで癒されるみたいだった。

ほんの10分間くらいのテスト。

「O.K!」

そう声をかけられた瞬間、はっとして我に返る。

演技をしてたのかどうか。

ただ、ハリーと映画の中に迷い込んでしまったように、あたしは映画の中のジェリー・ナイトと話をしていたような気がしていた・・・・・。