「お前何のカード?」
「ん…《菊一文字》」
問う言葉、返される言葉。
この、ヤマトらしさが意外とオレに合う。
一緒に居て楽な奴ってそうそう居ないよな。
そんな事を思いつつオレ、和谷中凛は記憶を頼りに菊一文字を思い出す。
「刀だっけか?オレはねー、花火」
「殺傷力低くていいんじゃないか」

そういう問題じゃないと思う。

「花火…なのかなぁこれ」
「まぁ設置型爆弾?それか普通に投げる」
丸くて小さくて導火線があって、そんで黒い。
…うん、花火だろこれ。
《爆弾》な訳がない!
長い廊下を進みながら現実逃避。
ふとヤマトが足を止める。

「で、現実逃避は済んだか?」
「ち、ちがっ!花火だってこれ!」
「はいはい、わかったから前を見ような」
言われる通りに前を見る。
…誰かいる

恐らくは同年代、ばっちり化粧してもまだ足りない様子で、教室の真ん中で足を組んでいる。

「見た目からして元クラスメイトの」
「敵だな」
「え、だから」
「敵だな」

確かにヤマトとは仲悪そうだったけど…
クラスの真ん中の彼女は元クラスメイトの鍵山マドレーヌ(自称)。
本名鍵山華子(かぎやまはなこ)
中二病だ。

「あ、ナデシコとリン」
「ヤマトだ」
「見て見て化粧してみたんだよ」
「話を聞け」
「ところで支配者が近くにいるけど私がいれば大丈夫だからね!」
「もう何なんこの子」

きゃあきゃあ笑ってる鍵山。
…ううむ、仲悪そう。
「じゃあここはマドちゃんに任せて先に進もうか」
「うむ、本拠地まで辿り着かねばな」
「うい、そういうことで。頑張ってねマドちゃん」

「えっ…えぇ!?ま、待ちなさいよぉ」

情けない声は無視して、先を急ぐ。
ごめんねマドちゃん。オレ、ヤマトには逆らえないわ…