「詩子(ウタコ)、お前もかぁ……」




私と母の目の前で、担任の寺岡先生は一枚の紙をペラペラとさせながら、わざとらしく肩をうなだれて大きなため息をついた。




初夏らしい眩しい日差しが教室の窓から差し込み、爽やかな風がカーテンを揺らしている。




6月も半ばのこの日、中3になって初めての三者面談。


先生の大きなため息を聞いた母は頭を下げて、小さな声で「すいません」と謝っている。




「いや、お母さんは謝らなくてもいいんですよ」

「……でも」


先生と母は二人してそんな訳の分からないやりとりをしてる。