俺は走って戸城の元に向かった。

すると戸城は笑顔で首を横に振る。

これはきっと「待っていない」

という言葉の代わりだろう。

「じゃあ行こうか」
「うん」

戸城は俺の言葉に、かすかに

ほほを紅潮させてうなづいた。

戸城は緊張しているのだろうか。

しかし、俺にとっても、女子と

2人っきりでどこかに行くなんて、

初めてだった。

「今日どこ行く?」
「関山君が行きたい所で良いよ。って
 いうか決めて無いだけなんだけど……」

俺の質問に答えた後、戸城は

恥ずかしそうにうつむいてしまった。

誘ったのに行き先を決めていないなんて

恥ずかしいことなんだろう。

でも俺は別にそう思わなかったので

言った。