「キャーッ……」

いつもの黄色い声が今日は

不安げに小さく消えていく。

きっと隣に戸城が居るからだろう。

俺は目の奥で戸城の取り巻きである

何人もの男子学生をとらえた。

全員がもうすでに諦めたような

間抜けな表情だった。

「やっぱりモテモテじゃん」
 
自転車庫に自転車を片づけながら

戸城は言った。

「いや、カナもだよ」
 
鍵を抜きながら俺は言う。

やっぱり戸城がモテるのは、

自分が可愛いという自覚が

ないせいもあるかもしれない。

なんて良いヤツなんだろう。

彼女にして正解だった

かもしれない。

なんて、最低な事を思う。