隣には戸城が並ぶ。

「これじゃ、学校中の女子が怒るね」

自転車をこぎながら、戸城が

独り言のようにつぶやいた。

「良いよ。怒らしとけば。
俺は、か…香奈が良いんだから」

臭い台詞…。

すると、俺の横で戸城は

照れ笑いをする。

可愛い、と思った。

いっそのこと、本気に

なりたい、と思った。

本気で相手のことを思って

いないのに最低だ、と思った。

でも事実上は一応恋人同士だ。

何だか複雑な気分になる。

それから俺たちは他愛も

無い会話をした。

お互いの事を手探りで話していった。

しばらくすると、高校の校舎が

近づいてきた。