「だけど、頑張って、誰かが自分を見てくれた?」


「それは・・・」


言葉が出て来ない。


それを聞かれたら、私はNOと答えるしかないから。


「頑張るのはとてもいいことだよ。ただね、ほんとの自分を見せることも大切なんだよ」


じゃあ、私がもっと甘えてたらよかったの?


花音ばっかり見ないでとか。


ピアノの発表会に来てほしいとか。


病気のとき、傍にいて欲しいとか。


もっと、ワガママ言ったらよかったの?


「ごめん。泣かせるつもりで言ったんじゃない」


なぜか流れてきた涙を見て、先生は困った顔を浮かべる。


そして親指でそっと、私の涙を拭った。


「君は、甘え方を知らな過ぎる」


「先生」