音を奏でて~放課後の音楽室~

「いるかな、先生」


今日は、教室がお休みの日。


もしかしたら、先生いないかもしれないな。


でも、家にいたくなかった。


あのまま家にいたら、私を気遣ってくれたおばあちゃんに、冷たい態度をとってしまいそうだったから。


ピアノ教室まで、歩いて10分。


先生の家のチャイムを押す。


「はーい」


玄関が開いて私を見た先生は、少しびっくりした顔をした。


「ごめんなさい、突然来て」


「うんん、いいのよ」


私が小さいころから通ってるこのピアノ教室。


みちる先生は、40代くらいの女の先生で、綺麗な黒髪にゆるいウェーブがかかった美人さん。


結婚する前は、世界でも有名なピアニストだったの。


みちる先生がこの教室を始めたのと同時に、私もこの教室に通い始めた。