「お姉ちゃん、すごーい」


何曲か弾き終わると、花音がパチパチと拍手をした。


「ねっ、おばあちゃん。お姉ちゃんすごいよね」


「うん。すごいね」


「おばあちゃんは、何か聴きたい曲ある?」


花音を見つめるおばあちゃんに、そう声をかける。


「私はいいよ。花音ちゃんに弾いてあげて」


「・・・うん」


おばあちゃんの笑顔に、私も笑顔を返す。


これは、おばあちゃんの優しさ。


いつも私のピアノが聴けない花音に、いっぱい聴かせてあげてっていう優しさ。


でもそんなおばあちゃんの優しさが、私の心にチクンと棘を刺す。


花音にかける優しい言葉。


花音を見つめる、優しい瞳。


分かってるけど、嫌なんだ。