耳元でささやかれて、私はそっと鍵盤を動かした。


これが、ほんとの私?


よく分からないけど、今は先生の言ったことを信じて弾こう。


「先生」


「ん?」


「上手く、弾けてましたか?」


「うん。君らしさが出てた」


そう言って先生は、優しく私の頭をなでてくれた。


私は、自分が嫌いです。


でも、先生が言ってくれた私なら、好きになれるかな。


「また、ピアノを聴かせてくれますか?」


「はい。私でよければ」


「君のピアノがいいんです」


先生の言葉に、心が温かくなる。


今まで泣いていたのがウソのように、私は笑顔になっていた。