音を奏でて~放課後の音楽室~

先生が私の顔を覗きこんでくる。


その視線から逃げるように顔をそむけ、目の前のピアノを見つめた。


「なんでもはっきり言うのが私の性格です。今さら変えられません」


「そうだね」


先生はクスッと笑うと、窓の外に視線を向けた。


「でもね。その言い方で傷つく人もいるってこと、忘れないように」


「はい」


「田島さんが言ってました。優音は、勉強も運動も音楽も完璧だからそんな風に言えるんだって。出来ない人の気持ちが分かってないって」


「私は・・・」


先生の言葉に、グッと唇を噛みしめる。


「私は、完璧なんかじゃない」


そこから先は、なぜだか声が上手く出なく、唇を噛みしめたまま俯いてしまった。


「言っていい。我慢しなくていいから」


先生が私と同じ高さにしゃがみ込み、そっと私の頬に手を添える。


「君の、涙の訳を教えて」