「トランペット、全体的に音が低い!」


暑い夏が始まった。


1か月後には、3年生にとっては最後の大会が控えていた。


そんなある日の部活。


今日は、内田先生が職員会議があるとかで、私が指揮を振っていた。


定期演奏会とかでも、たまに私は指揮を振ることがある。


「クラ、もっと音合わせて」


曲は、少しずつ形になってきている。


でもそれより、気になることがあった。


音があってない。


すごく綺麗な曲のはずなのに、不協和音に聞こえる。


「止まって」


手を振って、演奏を止める。


「もう一回チューニングします」


私の声に、音楽室内が少しざわめいた。