階段を下り、エントランスホールに出てくる。


「あっ、ショパンの仔犬のワルツ」


この病院のエントランスホールには、自動演奏をするピアノが置いてある。


その音にひかれるように足を動かすと、見覚えのある姿が目に入った。


「先・・・生?」


小さな声で呼びかけると、内田先生が振り向き、少し驚いた表情を見せた。


「こんなところで会うなんて、偶然ですね」


「はい」


そう言って微笑んだ先生に、私もなんとなく笑顔を返す。


「先生、学校帰りですか?」


今日は土曜日で部活もないはずなのに、先生はいつも通りスーツ姿だった。


「はい。少しやらなければいけないことがあって」


「そうなんですか」


「清水さんは、どうして病院に?」


「お見舞です。祖母と妹の」