音を奏でて~放課後の音楽室~

花音は、家に帰ってくるたび、私にピアノをせがむ。


「花音、私のピアノ好き?」


「うん、大好き!」


花音は、自分の感情を素直に表現出来る子。


私とは、大違い。


「あっ、お母さん」


花音の声にドアの方を向くと、お母さんが病室に入ってきたところだった。


「ねーお母さん、私帰れる?」


ベットサイドに来たお母さんに、早速そう聞く花音。


「調子が良ければね。だから、大人しくしてなさい」


「はーい」


お母さんが花音の頭をなでる。


その姿を見て、そっと病室を抜け出してきた。


覚えてないだけかもしれない。


でも私は、お母さんに頭をなでられたことがない。