「おばあちゃん」


「あら、優音ちゃん」


病室を覗くと、一番最初におばあちゃんの顔が見える。


元気そうな顔を見て、ホッと胸をなで下ろす。


数週間前から体調を崩していたおばあちゃんは、入所している老人ホームから病院に移って入院生活を送っていた。


春から夏になる気候についていけず、風邪をひいたらしい。


それがなかなか良くならず、結局は入院することになった。


「おばあちゃん、具合どう?」


「もうだいぶいいんだよ。来週には退院出来るって」


「そっか。よかった」


ベットの近くにあった椅子に座る。


「優音ちゃんのピアノが聞けなくて寂しいよ、ここは」


そう言っておばあちゃんは、私の頭をなでる。


「老人ホームに戻ったら、いつでも弾いてあげるからね」


「ありがとう」