「君の音楽は、スーッと心に入ってくる」


「そうですか?」


リクエストされた曲を弾きながら、先生の言葉に耳を傾ける。


「もう、音楽なんて・・・」


今、なんて言ったんだろう?


先生の言葉は、フォルテの音に負けて聞こえなかった。


曲を弾き終わって、ホッと息を吐く。


「ありがとう」


「いいえ」


先生に笑顔を向けられて、私も笑顔を返す。


「無理に、弾かせてしまったかな?」


「そんなことないです。弾きたいって思ったから」


「そう」


先生と私の間に、なんともいえない静かな時間が流れていく。


その時間が、なんだかすごく心地よかった。