あっ、私今すごい酷いこと思っちゃった。


口に出してハッとする。


花音のこと私、そんな風に思ってたの?


だったら、ものすごく酷いお姉ちゃんだ。


「清水さん?」


鍵盤の上に手を置いたまま固まってしまった私を見て、先生が心配そうな声で私を呼んだ。


「あっ、すみません。なんでもないです」


「いえ。嫌いな曲を無理して弾くことない」


そう言って先生は、表情を和らげた。


「先生。カノンは弾けないけど、他の曲なら弾けますよ」


笑顔を作って、他の曲を弾こうと深呼吸する。


うん、弾ける。


自分に言い聞かせるようにして、新たな曲を弾き始めた。


「清水さん」


その直後、先生の大きな手が私の手首を掴んだ。