軽く鍵盤に触れると、ポーンと柔らかい音が響く。


ゆっくりと、ゆっくりと、指を動かす。


ほんとは、親と話し合いなんかしてない。


音大に行きたいなんて一度も言ったことないし、家を出ようと思ってることも話したことない。


だって、私のことなんて誰も興味ないから。


いつも、いつも、花音のことばっか。


「分かんない」


ピアノを弾きながら、ポツリと言葉が漏れていた。


親の愛情なんて、とっくの昔に諦めたはずなのに。


だけど、なんなんだろう。


今日みたいなことがあるたびに、胸が苦しくなる。


私のことなんかどうでもいいって思い知らされるから?


「分かんない」


この気持ちはなに?


一体私は、親に何を求めてるの?