「ピアノ教室とかには?」


「昔から通ってます」


「こういう実技試験対策はしてくれますか?」


「はい」


そうですか、と言って内田先生は見ていた資料を閉じた。


「ところで、清水さん」


「はい?」


先生が真っ直ぐ私と向き合う。


「実家は出て行くつもりですか?今言った大学は、家から通える距離にはない」


「はい。出て行くつもりです」


私はそうきっぱり答えた。


「ご両親はなんて?」


「別に。好きにしろって」


「分かりました。それでは、今日はこれで終わりにします。この話は、ご両親にしてくださいね」


「はい。ありがとうございました」