それだけ言うと、さようならと先生に挨拶をして階段を駆け下りた。


人に嫌われても、別に私は気にしない。


ピアノを弾いて、音楽を聞けば、嫌なことなんてすぐに忘れるから。


集団じゃないと何もできない人間にはなりたくない。


「ただいま」


家に帰っても、誰も私のことを迎えてくれない。


だって、家に誰もいないんだもん。


「バッカみたい」


それでもどうしても、ただいまと言ってしまう。


一体私は、この家に何を求めているんだろう。


私のことを見向きもしない親に、何を求めているの?


この家に帰るたびに、私の心にはポッカリ穴が開く。


少し明るい感じのピアノ曲を弾いて、気分を落ち着かせる。


「もう、大丈夫」


1曲弾き終わると、自分にそう言い聞かせた。