私が目を開けても、仁はまだ手を会わせていた。


一体、何を話しているんだろう。


「優音、少し歩こう」


手を合わせ終わった仁は、私の手を取った。


「何を話してたの?」


「ピアノまた始めたこととか、いろいろ」


「そっか」


歩くのをやめて、丘の上から海を見つめる。


「この前、部屋を片付けてるときに見つけたんだ」


「ん?」


「母さんが書いてた日記」


仁が一枚の紙を、ポケットから取り出した。


「その中の一枚」


そう言って私に見せてくれた。


端がビリビリになっていて、破ってきたのが一目で分かった。