「お花、飾ってあるね」


お墓には、まだ枯れていない綺麗なお花が飾ってあった。


「未だに来るんだ。親のファンがね。花を飾っていってくれる。前にみちるさんがここに来たとき、ファンに会ったって言ってた」


「そうなんだ」


仁のご両親は、たくさんの人に愛されていた。


仁がそっと、お墓に触れる。


「ごめん、今まで来なくて」


微かに震える仁の声。


ピアノを弾けなくなった仁に、ご両親が言った言葉。


その言葉は、深く仁を傷つけた。


でももう、大丈夫だよね。


「優音、花飾ってくれるか?」


「うん」


萎れ始めた花をどけて、持ってきた新しい花を飾る。


それからお墓に手を合わせた。