そう答えて、ピアノの上に指を置く。


「先生」


「はい?」


「下手でも、笑わないでくださいね」


「笑いませんよ」


深く息を吸って、ピアノを弾き始める。


放課後、誰にも邪魔されないで弾くピアノ。


その一人の時間が好きだった。


だから誰かが傍にいて、私のピアノを聞いてる。


なんだか不思議な感じ。


弾き終わると、パラパラと拍手が起こった。


「ピアノを弾くのは楽しいですか?」


「はい」


先生がピアノの上に、右手を乗せる。


やっぱり、細くて綺麗な指だった。