「先生は、ピアノ弾きますか?」


「あまり」


「あまりってことは、たまに弾くってことですか?」


「昔は、弾きました」


「今は、弾かないんですか?」


「時間がないから」


「そうですか。じゃあ今、弾きません?」


「随分急ですね」


少し驚いた顔をしたあと、先生は少しだけ微笑んだ。


「僕はもう、弾けません。代わりに清水さん、弾いてくれませんか?」


「私ですか?」


「はい。そうですね、ショパンとか」


「あっいいですよ。幻想即興曲とか?」


「好きですか?」


「はい。好きです、この曲」