音を奏でて~放課後の音楽室~

先生と一緒に玄関を出る。


「先生、車は?」


「みちるさんのところに置いてきた」


「じゃあ、少し歩こう」


自然に手がつながる。


「お父さん、途中でいなくなっちゃったね」


「俺がいきなり優音を連れ去るようなこと言っちゃったからな」


足を止めて、電信柱の陰に隠れる。


「ずっと、親から連れ去って欲しいって思ってた」


「俺も、そう出来たらって思った」


スーツを握り、上を向いて先生を見つめる。


「でも、ちゃんと認められて家を出るんだよね」


「ああ」


親から逃げるんじゃない。


送り出してもらえるってことだよね。