音を奏でて~放課後の音楽室~

お母さんに座るよう促されて、またソファーに戻る。


「すみません。なんか飛び出していってしまって」


お母さんが先生に頭を下げる。


「いえ、こちらこそ」


「お母さん・・・」


不安そうな顔を見せていると、お母さんが私に向かってニッコリと笑った。


「大丈夫よ。お父さん、急に優音が彼氏連れてきて寂しいだけだから。しかも一緒に暮らすって言われて」


「すみません」


「これから先生は、ピアノの講師を?」


「はい。僕の両親は、世界的にも活躍していた指揮者とピアニストでした。今はもう事故で死んで何年もたつのですが」


先生がお母さんに自分のことを話し出す。


「僕も小さいころからピアノを弾いていたのですが、いろいろあり高校のころから一旦ピアノを離れていました。でもこの前恩師にピアノを教えないかと言われて、その話を受けることにしました」


「そう」


「講師をしながら、自分も成長していければいいなと」


お母さんが先生に笑顔を向ける。