「今日は音が乱れてますね」


「えっ?」


急に聞こえた声に驚くと、内田先生が私の後ろに立っていた。


「先生、気配なさ過ぎです」


「それは、すみません」


「音、おかしかったですか?」


「少し。弾き方が、いつもより雑だと思いました」


「そうですか」


やっぱりさっき二人を怒ったから、気持ちがまだ落ち着いてないんだ。


「いつもと違うって、よくわかりますね」


「いつも職員室まで、あなたの音は聞こえてきますから」


「邪魔、ですか?」


「いいえ。ピアノの音を、楽しみにしてる先生もいるみたいですよ」


「そうなんだ」


それを聞いて、なんだか嬉しくなった。