音を奏でて~放課後の音楽室~

「優音たちと一緒に、俺も高校の先生を辞める」


「えっ?」


急にそんなことを言われて、思わず先生の顔を見つめてしまった。


「F大の講師が一人辞めるらしくて、代わりにピアノ教えないかって。ホフマン先生が」


「じゃあ、先生F大のピアノ講師になるの?」


「悩んだけどね」


先生が私の頬をなでる。


「ピアノから遠ざかってた俺が、人にピアノ教えていいのか。小さいころから知識は詰め込まれてきたけど、技術的な問題もあるし」


「でも、ホフマン先生が誘ってくれたんでしょ?」


「そう。だから、受けようと思った。教えながら、自分も成長していけばいいと思って」


「うん」


頬をなでていた手が、私の髪を耳にかける。


「ちゃんとピアノに向き合える」


「よかったね、先生」


「ああ」