「うん」


葵に向かって手を振ると、やっと教室を出て行った。


「行けるわけないよ」


葵はああ言ってくれてるけど、きっと私のこと嫌いな子もいる。


あんな風に部活辞めて、今さら顔を出してもしょうがないよね。


「もう、あと1か月か・・・」


高校生活も冬休みが終わればあと1か月。


2月からは家庭学習に入るから、それまでにもう一回音楽室を見ておきたいな。


そんなことを思って窓の外を見つめる。


「でも、ここからじゃ音楽室は見えないんだけど」


この教室から渡り廊下を渡らないと、音楽室には行けない。


しかも教室とは反対側にあるから、ここからじゃ見えないんだよね。


「清水さん?」


不意に名字を呼ばれて、後ろを向く。


そこには、ドアから少しだけ顔を出した内田先生が立っていた。